世界中が感じている!
「気候変動に立ち向かわなければ!」

気候変動は地球全体の問題。1990年頃から問題視され続けてきましたが、それぞれの国にそれぞれの事情や考え方があるため、意見をまとめて対策を進めることが難航していました。
ところが近年、世界全体で地球温暖化対策や持続可能な社会を目指す取り組みと目標が合意されたのです。これってすごいこと。それだけ世界のみんなが危機を感じているのです。

《世界で決めた温室効果ガス削減の約束「パリ協定」》

「パリ協定」とは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減に向け、世界197の国と地域が参加している約束のことで、2015年に開催された「COP21」で採択されました。
「COP」とは締約国会議の略で、気候変動問題の解決について話し合う「国連気候変動枠組条約締結国会議」を表す際に最もよく使われています。「COP」の後ろに付く数字は開催回数を表しています。



《世界で5番目に多い日本の二酸化炭素(CO2)排出量》

過去20年間における大気中の二酸化炭素濃度の増加の内4分の3以上は、石炭・石油など化石燃料の燃焼によるものです。従って、工業化の進んだアメリカ、 ロシア、日本などの先進国は排出量が大きな割合を占め、とりわけ重い責任を担っていると言えます。また、先進国の一人当たりの排出量は途上国を大幅に上回っています。
途上国では、現在の一人当たりの排出量は少ないものの、経済発展の進行で急速に増加しつつあります。経済発展と温室効果ガスの排出抑制の両立した社会システムが、先進国との連携のもとに形成されることが切に期待されます。

出典:「データで見る温室効果ガス排出量(世界)」(全国地球温暖化防止推進センター)を引用

《あなたが住んでいる地域の温室効果ガス削減目標は? (2022年現在)》

世界で取り組む温室効果ガスの削減目標が「パリ協定」で決まったことをうけ、日本や国内の各自治体でも次の図のように目標が定められていきました。でも、どうして日本、東京、武蔵野市では目標が異なっているのでしょう?

※ネット・ゼロ /実質ゼロ:
人間の活動によって排出されるCO2の量と吸収される量が同じになる状態のこと。

世界、日本、東京都、武蔵野市では、土地の広さや人口、生活様式や主な産業などに関連し、それぞれのエネルギー事情が異なります。例えば、武蔵野市は住宅や商業施設が多い一方で工場などが少ないために、エネルギー消費の割合は、その8割を家庭部門と業務部門が占めています。CO2の排出量を家庭で削減するのと工場で削減するのでは、方法も違えば削減量も違います。そうしたエネルギー事情が異なる国や県や市などでは、それぞれに削減目標も変わってくるのです。




《実は…、今の各国の削減目標は1.5℃を達成するには全然足りていないらしい! 》

この図は、各国が宣言した自主目標がすべて達成された時の温室効果ガスの削減量と、世界の平均気温の上昇を1.5℃もしくは2℃に抑えるために本当に必要な削減量の差を表していますが、設定した目標を達成するだけでは全然足りないことがわかります。+2.0℃の場合は11ギガトン-CO2e、+1.5℃の場合は25ギガトン-CO2e分を今の目標からさらに削減する必要があります。
2030年頃が平均気温上昇を1.5℃に抑えられるかどうかのタイムリミット。国や企業だけに任せていたら手遅れに…なんていうこともありそうです。

パリ協定の自主目標と長期目標のギャップ
出典:『Emissions Gap Report 2021』(UNEP, UNEP Copenhagen Climate Centre)より、図を加工

もっと深堀りしてみよう

「世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるために、必要な温室効果ガスの削減量」

温室効果ガス排出量には「これ以上排出してしまうと、平均気温の上昇が1.5℃を超えてしまう」というライン(限度)があります。言い換えれば、1.5℃に抑える上で排出しても大丈夫な量が決まっているのです。この量を「カーボンバジェット(炭素収支)」と呼んでいます。
カーボンバジェットは2020年の時点で残り8%。現在のペースのままでいくと、2030年頃には使い切ってしまいます。このことから、平均気温の上昇を1.5℃に抑えるためのタイムリミットは2030年頃と言われているのです。

パリ協定の+1.5℃目標を達成するには、温室効果ガスの累積排出量(過去の排出量+これからの排出量)がカーボンバジェットを上回らずに、「排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)」にたどり着く必要があります。具体的には、2030年までに二酸化炭素の排出量を2010年比で45%削減、2050年までに実質ゼロにしなければなりません。
しかし、パリ協定を達成するために削減すべき排出量と、条約に参加している各国が決めた削減目標との間には大きな差(排出ギャップ)が生まれています。 削減目標に対しての進捗や、1.5℃目標と現状の差などについては国連環境計画(UNEP)が毎年発表している『Emissions Gap Report」エグゼクティブ・サマリー』で確認することができます。




どうやって立ち向かう? 2つの気候変動対策

地球温暖化によって、さまざまな気候変動を引き起こし、自然災害をはじめ水不足、食糧難、健康への被害など、私たちの生活に起こるさまざまな影響にどうやって立ち向かえば良いのでしょう?
1つは、気候変動の原因となっている温室効果ガスの排出削減のための「緩和策」、もう1つは気候変動の影響による被害を防いだり軽減する「適応策」、この2つの対策について、国や自治体、学校、企業、個人を問わず、あらゆる単位で取り組むことが大切です。

出典:『COOL CHOICE』(環境省)、『気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)』(環境省)、『地球温暖化防止に向けて』(林野庁)を参考

原因を少なくしよう

緩和策

気候変動による人間社会や自然への影響を避けるために、原因となる温室
効果ガスの排出量を減らし、気候変動がこれ以上進まないようにすること。

エコカーの普及

•再生可能エネルギーで発電した電力と、電気自動車・プラグインハイブリット車・燃料電池車を活用

再生可能エネルギー
の活用

•家庭で使用する電気を再生可能エネルギーで発電した電力に変える
•太陽光パネルを設置

植林・森林の管理

•人工林を整備(高齢の樹を切って使用し若い樹を増やすことで温室効果ガスの吸収量を増やす、間伐を行う)
•炭素貯蔵のため、住宅などに木材を利用

節電・省エネ

•照明・家電のこまめなスイッチオフ
•省エネ家電を導入
•宅配便をまとめて受け取る


影響に備えよう

適応策

最大限に緩和に取り組んでも避けられない気候変動の影響に対し、その
被害を軽くして、よりよい生活ができるように工夫していくこと。

水利用の工夫

•節水
•雨水・再生水を利用
•地下水の状態や状況を調べ地域で適切に利用

蚊が媒介する
感染症の予防

•肌の露出を控える
•虫除けを利用
•たまり水を抜いて幼虫発生を防止

熱中症予防

•涼しい服装を心がける
•高齢者へ声かけ
•クールスポットを設置

高温でも育つ農作物の
品種改良や栽培

•高温でも色付きの良いりんごの品種の導入(例:「紅みのり」「錦秋」「秋映え」など)
•高温耐性に優れた水稲を導入(例:「にじのきらめき」)

災害に備える

•ハザードマップを作成
•災害リスクが高い地域から移転