アパレルの背後にある社会問題を知り
「やさしいせいふく」をスタート

学生団体「やさしいせいふく」
取材:2022年10月23日
村山一央(むらやま いお)さん

イベントTシャツで気づいた社会問題

武蔵野市発の学生団体「やさしいせいふく[注1]」。自然、人、世界にやさしい服づくりを自分たちの世代から広げていくために、さまざまな活動を行っている。設立メンバーの一人、村山 一央さんは、現在(2022年10月時点)大学1年生。中学生のころ、先生に誘われて何気なく参加した「アースデイ東京[注2]」での学びが活動のきっかけとなった。
 みんなで同じものを着て盛り上がる、イベントTシャツ。その材料となる綿花の栽培でもたらされる環境問題や、同世代の若者も劣悪な労働環境で働く製造過程を知った村山さんは、「見えない犠牲の上に成り立っているかもしれないTシャツを着て楽しんでいた」と、大きなショックを受けた。
 「同じ世代の人たちにこのことを知らせたい」と、学内や他校の仲間とともに団体を設立。アパレルの背後にある社会問題を解決するために、アパレル企業に声をかけ、説明会を開催した。企業の立場を考えすぎると聞きづらい質問もあったかもしれないけれど、ストレートにぶつけて、回答を得た。「まだ学生だからではなく、学生だからこそ作り出せる価値や活動がある」と強く感じたという。
 その後も、同世代に問題を知ってもらうためのワークショップや学校での講演会、「やさしいてぃーしゃつ[注3]」の販売など活動を広げ、多くのメディアにも取り上げられている。

一歩外に出てつながる面白さ

いま「やさしいせいふく」に所属するのは中学生から大学生までの19人。中にはSNSでやさしいせいふくの活動を知り、都外から参加しているメンバーもいる。メンバーとはオンラインで話し合ったり、「アースデイ東京」や「超・文化祭」に参加したりと、サークル活動のように盛り上がっている。その一方で、周りの人に活動について話すと「すごいね」「意識高いね」という反応が返ってくる。「自分とは遠いものとして捉えられているように感じることもある」と、村山さんは話す。
 「一歩学校の外に出てみたら、新しいコミュケーションが生まれ、活動が始まった。それは本当に面白い経験でした。心の中に『何かしてみたい』気持ちがあるなら、恥ずかしがらずに一歩踏み出してみてほしいです」

[注1]やさしいせいふく

人にも環境にもやさしい服づくりを通してよりよい社会の実現を目指す、中高大学生による団体。服との付き合い方を考える機会づくりや生産構造の変革など、自然、人、世界にやさしい服作りのかたちづくりを目指している。

[注2]アースデイ東京

1970年G・ネルソン上院議員(米)が4月22日を”地球の日”であると宣言。以降、世界中でこの日に地球への関心を表現する行動が続けられている。日本では90年代から広がり、東京では毎年4月22日のアースデイの前後の土日に、代々木公園を中心に「アースデイ東京」が開催されている。

[注3]やさしいてぃーしゃつ

「やさしいせいふく」が2022年4月1日から販売開始した、綿花の栽培から服の縫製まで、環境・人・地球にやさしい方法で製造し、その製造過程も公開したTシャツ。
超・文化祭:持続可能な未来を目指して何かしたい人が、「知る」「つながる」「行動する」ためのイベント。学校の枠を超え、企業やNPOも参加して新しい価値・文化を世の中に発信し、既存の文化祭を超えていくことを目指す。2020年から毎年行われている。 (主催:Think the Earth)

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