マイボトルで校内のペットボトル4,285本分を削減
クラス対抗戦のアイデアで、マイボトル習慣を定着

明星高等学校
「M-project」

取材:2022年12月21日
村山 陽朗(むらやま ひろあき)さん
師 拓夢(もろ たくむ)さん
左:村山陽朗さん、右:師拓夢さん

海洋ゴミ問題への興味からはじまった

プラスチックゴミが社会問題になっている近頃、学校も例外ではない。その中でも大きな割合を占めるのがペットボトルだ。そのペットボトルをなくしていこうというプロジェクトが、明星高等学校を舞台に生徒が主体となって始まった。マイボトルを使い「mymizuチャレンジ[注1]」に取り組んでもらうことで、ペットボトルの削減を目指す「M-project」というものだ。
 このプロジェクトのはじまりは2020年、メンバーの一人、当時1年生だった奥村翔さんが、SDGsについて調べ取り組む授業のなかで17番目の目標である「海の豊かさを守ろう」に興味を持ったことがきっかけだった。どんな取り組みができるか考えた結果、無料給水アプリ「mymizu」を運営する一般社団法人Social Innovation Japanにコラボを持ちかけた。翌年には、同じく「海」に興味を持って調査をしていた村山陽朗さんと師拓夢さんが加わり、2022年の現在は、青柳航暉さんを合わせた4人のグループで活動している。

村山さんは中学校の修学旅行で訪れたセブ島で見たゴミに衝撃を受けたことから海洋ゴミ問題に関心を持つようになった

明星高等学校オリジナルのマイボトルをデザイン

はじめに行ったのは、生徒にマイボトルを配布することだった。オリジナルデザインを学内で公募し、応募総数198作品の中から秦 愛英さんのデザインが選ばれ、完成したマイボトルは生徒からの好評を得た。こうした活動は、生徒だけでなく、先生を含めた学校全体へと波及していった。3年生が卒業記念に給水機を寄贈、翌年にはPTAからの支援もあり、各階に給水機が設置された。多くの教員がオリジナルマイボトルを購入し、さらには校長先生が学内の自販機からペットボトル飲料を無くすなど、校内は盛り上がりを見せた。

学内の給水機とオリジナルマイボトル。マイボトルは白と黒、サイズは350mlと500mlで計4種類

マイボトルを習慣化するためのチャレンジ

マイボトルの使用を習慣化させるためM-project が次に行ったのは、2021年6月8日から7月5日の1ヶ月間、明星高等学校の2年生260人が参加してペットボトルの削減量を競うイベント「mymizuチャレンジ」。設置された給水機を利用し、喉が渇いたらマイボトルに給水して飲む習慣を普及させようと考えたのだ。
 ところが困ったことも起きた。「やっぱり自動販売機からペットボトルが消えたっていうのは結構大きな問題で、不満を漏らす生徒もいました。そうした人たちも全員巻き込んでイベントを続けることをずっと悩み続けた結果、賞を作ることにしたんです。クラス全体で頑張ったら賞をあげることにして、団結してモチベーションを上げてもらえるようにしました。また、個人賞も作り、個人でも全体でも頑張れるように、一人ひとりが積極的に取り組めるようにしました」と、村山さんは工夫の一つを話してくれた。
 工夫した点はこれだけではなかった。「あと何日」と書かれたカウントダウンボードを階段に設置し、イラストやデザインを施して、毎朝ここを通る生徒に意識づけを図ったのだ。さらに、全員で削減した量が実感できるよう、ペットボトルを積み上げた高さを換算して提示するようにもした。こうした取り組みの成果について師さんはこう振り返った。
 「みんな、はじめは面倒くさいなという気持ちもあったと思うんですけど、1ヶ月という決まった期間ということもあり、最後にはクラスごとで頑張ろうという雰囲気が出てきてとても盛り上がりました。今回のイベントは2年生だけだったので、規模的には小さいけれど大成功でした」

階段に設置された「mymizuチャレンジ」のカウンターボード

環境活動を広げるために

このイベントで削減できたペットボトルの本数は、なんと4,285本。積み上げた高さは、富士山までは届かなかったが、スカイツリーの高さは超えられた。
 村山さんは「イベントが終わっても休み時間に給水機で水を汲むために並んでいる人を見ると嬉しい」と、その後も定着したマイボトル文化に確かな感触を得たようだ。この活動を通じて、これまでよりさらに海洋問題に対しての関心が高まったという。「自分が関心のある問題について調べるということがまず大前提。そして、今はいろんな団体や活動があるので、そこに一度参加してみることから、次に繋がるんじゃないかと思う。自分は大人と話ができたことでとても刺激を受けました」
 また、師さんは環境活動へ取り組む姿勢についてこう話す。
 「とにかく行動してみること。たぶん1人で考えている人もいると思いますが、今はSNSもあり簡単に人と繋がることができる。探せば同じ思いを持っている人がいるので、そういうグループに参加したり、繋がったりするだけでも考え方が広がり、活動に繋がると思う。また、環境問題に対する活動というのは正解がない。人それぞれ考え方が違うので、ぜひ他の人の意見も聞いた方が良いと思います」

[注1]Mymizu チャレンジ:

一般社団法人Social Innovation Japanが開発・運営する、スマートフォンでチャレンジ専用のダッシュボードを使い、ペットボトル削減量をチーム戦で競いながら、楽しく取り組めるアプリシステム。登録すればどんなグループでも参加することができる。

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